ここ最近,重症ニキビを治す内服治療
「イソトレチノイン」
に関するお問い合わせを多くいただいております。
現在、イソトレチノインは日本ではニキビに対する保険適応はなく、一部の医師により自費診療として処方されています。
アメリカでは、1982年にFDA(米国食品医薬品局)によって重症の尋常性ざ瘡(ニキビ)治療薬として承認されました。
この承認は、他の治療法(外用薬や抗菌薬など)が無効なケースに限定されており、重症のニキビに対しての強力な切り札とされています。
一方で、イソトレチノインの深刻な副作用、特に催奇形性のリスクがあることも強調しています。
このため、イソトレチノインの処方には厳しい規制が設けられており、米国ではiPLEDGEプログラム(妊娠リスクを防ぐための登録プログラム)に患者・医師・薬局が参加することが義務付けられ、服用中の患者には、避妊や定期的な妊娠検査が徹底されています。
日本でも治験が行われていますが、他国での効果と安全性を元に、日本人に対する効果と安全性の確認、およびリスク管理への対策を慎重に議論を重ね、時間を十分かけた上で検討されると考えられます。
広島皮ふ科では、希望される方に対して、イソトレチノインの内服療法を重症ニキビの治療に行っていますが、主に若い世代への治療となるため、治療効果や有益性が副作用を上回り、かつ患者さまの安全のために、定期的な通院や採血ができる方に限らせていただいてます。
若い妊娠適齢期の女性の場合は、スピロノラクトン(アルダクトンA)内服での治療をお薦めすることがあります。
スピロノラクトンは、アンドロゲン(男性ホルモン)受容体に作用して、その効果を抑える働きがあります。
アンドロゲンは皮脂分泌を増加させニキビの発生を促進するため、スピロノラクトンによりアンドロゲンの影響を抑えることで、皮脂分泌が抑制されニキビが改善する可能性があります。
ホルモンバランスが影響している成人女性のニキビ、特に月経前に悪化するニキビに有効とされています。
しかし、スピロノラクトンにおいても妊娠時に胎児への影響は考えられるため、内服中は避妊する必要があります。
ニキビは外見への影響があるため,感情面での生活の質(QOL)を著しく損なう可能性がある慢性の皮膚疾患です。
今後イソトレチノインの国内承認が認められると救われる人が多いことも容易に想像できるがゆえに、皮膚科医としても無責任に不適当な処方を行うことのないよう、しっかりと安全管理をしていく必要があると考えています。
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